数量認知において発揮される制御力量のコントロール能力は,出力された力量(Ys)と目標値(Xs)との関係でYs/Xs=1となる場合が最も高い.しかし,YsとXsに誤差(Es)が生じた場合,それを力量誤差情報として再修正し出力する能力はEs/Ys=0となるのが制御力量としての調節能力が最も優れている.これは,フィードバック制御系の一般的性質である.本研究は握力と背筋力の等尺性筋力発揮における力量のコントロールについて,与えられた目標値に対して発揮した力量を無告知(NNF)にした場合と告知(NF)した場合,両者の発揮する力量にどのような差が生ずるか検討した.結果についてNNFYsとNFYsの平均値は,全体的に男女共NNFよりNFの方が目標値に近づいており,出力力量の目標値に対するバラつきもNNFYsよりNFYsの方が小さくなった.又,握力・背筋力とも目標値の相対的負荷割合が高くなるに従いYs/Xsの関数は1,Es/Ys関数は0に近づく傾向が見られた.さらにNNFとNFのEs/Ys関数の差に一部ではあるが1%及び5%の有意差が認められ. NNFYsよりNFYsの精度が高まったことを確認した.これは,同一筋に対する筋出力指令としてNNFYsはNFYsにとってフィードバック制御系の外乱に抑制作用が働きやすい情報を提供し,さらに先行動作としてフィードバックの役割を果していると考えられた.
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