10~12週齢のICR, C57BL/6及びC3H/Heの各系統雌マウスを用い母性行動のpatternにおける系統差について検討し,既報のIVCS系マウスの成績と比較した。行動の観察は同一系統の新生仔1匹に対する被験マウスの行動(Retrieving, Licking, Nest-building,Lactation-position)を指標とし5分間行った。
その結果,次のような成績を得た。
1)新生仔に対しretrievingを最初に示した割合は,ICR系が42.3%, C57BL/6系が66.7%, C3H/He系が72.2%であり,IVCS系(0.7%)に比べ明らかに高率であった(p<0.001)。
2)単一母性行動はICR系(30.8%), C3H/He系(5.6%)にみられたが,C57BL/6系には1例も認められなかった。IVCS系(34.1%)が最も高い割合を示した。ICR系ではLのみの行動を示す個体(23.1%)も認められた。
3)複合の母性行動を示した割合はICR系が69.2%,C57BL/6系が100%, C3H/He系が94.4%であったが,4つの行動を示した割合では各系統間に著しい差異がみられICR系が7.7%, C57BL/6系が72.2%,C3H/He系が27.8%であり, IVCS系では135例とも認められなかった。
4)Lpを示した割合はICR系が23.1%, C57BL/6系が72.2%,C3H/He系が44.4%であり, IVCS系が著しく低い割合(0.7%)を示した(P<0.01,0.001)。
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