この研究の目的は,筆者考案による音楽経験促進プログラムの2年目の実践過程における保育者の創意工夫の特徴を,事例研究を通して明らかにすることである。先行研究を成したルビンとメリオンにこの活動プログラムに対して指導を受けた後,2年目の実践を行った。保育園児63名が,この実践プログラムに継続的に参加した。その結果,1年目と2年目とでは,異なる保育者の創意工夫や能動的姿勢が見られた。実践2年目では,4歳児に対する保育者のかかわりは,役割演技の創造に向けた問いかけやストーリー,役割演技の補完的役割が特徴的であった。5歳児に対する保育者のかかわりは,ストーリーや表現形式の創出に向けた歌や音楽の提示,補完,支持が特徴的であった。特に,1年間で4段階の活動を体験して2008年度に4歳児,5歳児になった子ども達は,音楽を聴いて考え,音楽的諸要素の理解と事象の象徴化による表現の創造へと自ら移行していくことができていた。その保育者の創意工夫によってまた子どもの表現が促され,子どもと保育者との相互作用によって,想像上の感情理解が進む。そうして,4歳児で役割演技の創造や場面の象徴化.5歳児では役割演技と音楽経験の一致という教育的効果が見られることがわかった。
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