ヒト末梢リンパ球をPhytohemagglutinin (PHA)で刺激し,螢光偏光度の変化をみる方法をSCM testという.本研究ではSCM-R値と他の免疫研究パラメーターおよび免疫療法との関連について検討した.その結果, SCM-R値は末梢リンパ球数,免疫皮内反応,血清補体値などとはまったく相関しなかった,末梢リンパ球幼若化能はSCM-R<1を示す健常人のリンパ球群で高く, SCM-R〓1の担癌患者リンパ球群で低い傾向にあった.リンパ球幼若化と螢光偏光の変化は,細胞内の異なった部位で生ずる現象であるが,今回の成績は両者が同一のリンパ球群によって惹起されている可能性を示唆している.また, SCM-R〓1を示す担癌患者リンパ球では, SCM-R<1の健常人リンパ球に比べてB細胞が少ない傾向にあった.このことは,リンパ球がPHAに反応してSCM-R<1となるためには, T細胞とB細胞の相互作用が必要であることを示唆している,臨床的にみると, OK-432による免疫療法を受けた担癌患者では治療前にSCM-R〓1であってもOK-432投与を4週間以上続けるとSCM-R<1に変化する傾向にあった. SCM-R〓1のリンパ球をOK-432含有培養液で短時間培養し,その後PHAで刺激するとSCM-R<1となった.したがって,臨床例でOK-432の免疫療法後SCM-R〓1からSCM-R<1に変化する機序として,リンパ球に対するOK-432の直接的な免疫賦活作用が示唆された.
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