当院では, 抗MRSA用抗生物質である塩酸バンコマイシン (VCM)・テイコプラニン (TEIC)・硫酸アルベカシン (ABK) については, 添付文書に記載された投与法が行なわれてきた. しかし, 有効治療域の狭いこれらの薬剤を添付文書通りの投与することは, 患者においては有効血中濃度の確保されていない可能性や副作用防止のトラフ値まで低下していない等の種々の問題が懸念された. そこで, 血中濃度を指標にしたTDMによる治療法が実施される院内のシステム作りを行ってきた.
平成13年4月より抗MRSA抗生物質 (VCM・TEIC・ABK) に関しては, 処方時に「特定抗生物質使用申請書」の提出を義務付けた. 使用が適応と認められた場合には, 薬剤部にて患者データを基に投与前シミュレーションを行い, 投与量と投与方法を医師に報告, 後日血中濃度を基に再解析を行い, 必要があれば投与内容の変更を行った. TDM導入前の13例と導入以降の17例において比較を行なった.シミュレーション実施による処方設計・血中濃度測定による処方変更は約63%であった. VCMの1回投与量はTDM導入前の平均0.69±0.079からTDM導入以降1.23±0.089に増量となったが, 投与回数は1日2回から1回となり, 投与期間も23.0±4.5日から12.1±1.0日に短縮された. この結果3剤の使用総量は2525 vialから1735 vialへと31%の減少をみた.
このように, 血中濃度を考慮した個人別の処方設計は, 臨床的に有効であり医療費の削減につながった.
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