抗男性
ホルモン療法
は前立腺癌の約80%の症例に対して有効な治療法とされている. しかし抗男性
ホルモン療法
に不応性の症例に対してこれを予知する方法は確立されていない. そこで著者は14例の前立腺癌症例に対して前立腺癌細胞質内R1881レセプターを測定し, 抗男性
ホルモン療法
経過中の血中testosterone(Tと略), dihydrotestosterone(DHTと略)を測定して臨床効果との相関について検討した. さらに9例については抗男性
ホルモン療法
の初期治療(両側除睾術とdiethylstilbestrol diphosphate計10gの投与)の前後において前立腺癌細胞質内R1881レセプターを測定し, 抗男性
ホルモン療法
R1881レセプターに対する影響について検討した. その結果, 血中T, DHTは14例全例が抗男性
ホルモン療法
により激減し, 両側除睾術(去勢と略)とdiethylstilbestrol diphosphate(DES-Pと略)10gの投与終了時ではT, DHTは治療前値のそれぞれ約5%, 25%に低下していた. またR1881レセプターは14例全例に存在(4.8~134.7fmol/mgcytosol protein)し, このレセプターと臨床効果との関係では14例中13例(92.8%)に両者の相関を認めた. したがってR1881レセプターの測定は, 前立腺癌の抗男性
ホルモン療法
に対する治療効果の予測に1つの重要な指標となると考えられた.
抗男性
ホルモン療法
の初期治療前後のR1881レセプターは治療前では解離定数(Kd)は0.74±0.53nM(Mean±S. D.), 結合部位数(Bmax)は49.3±47.4fmol/mgcytosol protein, 治療後では, それぞれ0.67±0.54nM, 34.2±42.4fmol/mg cytosol proteinであった. すなわち治療前後でR1881レセプターの結合親和性に変化は認められないが, Bmaxは抗男性
ホルモン療法
により大きく変動し, 癌組織のアンドロジェン依存性は消失の傾向にあることが推測された.
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