RPS(Real Person Slash、RPFともいう、日本で言う「生モノ」)――すなわち「架空の人物ではなく、実在の人物について描かれたファン・フィクション」(Fanlore 2023)――は、二次創作のカテゴリーの一つで、「非常に物議を醸し、論争的」(Thomas 2014:171)なグレーゾーンとして発展している。本論が注目する「宝塚歌劇の二次創作およびそのコミュニティ」には、宝塚歌劇のモットー「清く、正しく、美しく」に関わらず、実在の役者同士の関係性を恋愛化・性愛化にするケースが数多く見られる。「女性による女性同士の関係性を扱う二次創作・コミュニティ」として、宝塚歌劇の二次創作とそのコミュニティは、これまでの他のジャンルの二次創作とそのコミュニティと同じ特徴を持つのだろうか。本論は、宝塚歌劇の二次創作を専門対象とした非公式ファンサイト「サイトS」を調査対象にして、これらの二次創作とそのコミュニティの社会的な意味と研究の方向性を検討する。
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