ラットにおけるエタノール胃粘膜障害の形成から治癒に至る過程を電子スコープを用いて詳細に観察した.経時的観察では,粘膜のうっ血と点状出血がエタノール投与直後より認められ,1分後には一過性の浮腫が出現し,浮腫の消退とともに白色調を呈した剥離上皮が網目模様を形成するのが観察された.粘膜障害が強い場合には,剥離後の粘膜はびらんとして観察されたが,びらんは大弯側の襞に沿って縦走する傾向が認められ,エタノール投与後10分で粘膜障害のピークに達した.その後は再生粘膜により縦走びらんが治癒し,約2週間で病変の消失が観察された.また,胃粘膜障害の指標として用いるため,ラット実験潰瘍における内視鏡分類を作成し,経時的変化の検討をしたところ非常に有用であった.以上より電子内視鏡システムを用いることにより,病態生理に迫る微細な病変が捉えられ,ラット実験潰瘍への応用の有用性が強く示唆された.
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