本論文では,まず,火災前後の2時期のLandsat/TMデータを用いて,焼失域の特定に有効な波長帯について調べた。これにより,焼失域の特定には,近赤外域と短波長赤外域の波長帯が有効であるという結果が得られた。この結果から,既存の研究において火災後の回復過程の評価に用いられていた指標が,焼失域の特定においても有効であると考え,この指標をBAIと定義した。このBAIを用いた場合は,標高毎の大気の影響の差が小さいという結果が得られた。
BAIとNDVIとを被災程度別に比較し,BAIを用いることの有効性について検証した。BAIを用いた場合には,全ての被災程度間(激害・中害・無書)のBAI値に有意差があったのに対して,NDVIを用いた場合には,無害と中害の問に有意な差は無かった、,最後に,BAIを用いた焼失域マッピングと被災程度の分類を行った。その結果,現地踏査によって作成された焼失域図と比較すると若干の違いは確認されたが,NDVIを用いて特定した焼失域と比較すると,特定可能な面積は大きく向上しだ,被災程度の分類についても,検証エリア内では,高精度の分類を行うことができた。
このように,既存の研究で火災後の回復過程の評価に用いられていた指標が,焼失域把握にも有効であることが示された。
今後の課題としては,本論文で提案した手法の他地域での適用を検討することと,BAIと被災程度との関係をより明確にし,詳細な被災程度分類を行うことが挙げられる。
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