本研究では,リソースの格差がパラリンピック競技大会における各国パラリンピック 委員会(NPC)(とりわけ発展途上国のNPC)の参加および
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獲得力に与える影響 について検証した。国連の不平等調整済み人間開発指数(IHDI)のランキングと,国 際パラリンピック委員会の成績データベースを用い,夏季および冬季両パラリンピック 大会における各国パラリンピック委員会の参加に関して,チームの規模と獲得
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数 で見た成果という2つの観点から分析した。また,IHDI のランキングが最下位層であっ た諸国のNPC が夏季パラリンピック大会の直近の3大会において
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を獲得した種 目の種類についても分析を行った。
分析の結果明らかになったのは,次の点である。IHDI のランキングが下位の国ほど, 派遣するチームの規模は極めて小さい傾向にあるとともに,女子選手が一人もいない可 能性が高く,また
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獲得の可能性も著しく低かった。加えて,IHDI のランキング が最下位層の国々が獲得した
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はいずれも,競技用車椅子や下肢義肢などの高価な用具あるいはスイミングプールなど主要スポーツ施設の利用が必要とされない個人種目 においてである。
結論として,とりわけ多くのパラスポーツにおいて求められる技術的要件を踏まえる と,IHDI のランキングの最上位層と最下位層の国々の間に存在するリソースの不均衡 が,機会の平等を基盤にパラリンピック競技大会の発展・推進を目指す国際パラリン ピック委員会の取り組みを阻害する大きな要因となっていることが指摘できる。
キーワード:リソース依存,エイブリズム,パラリンピック大会,参加,成功
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