「河畔の低地草地」は"river-meadow","water-meadow"の訳語で,特に雨の多くなる冬,川の氾濫によって冠水する.これに由来する地名には主に古英語hamm,古スカンジナビア語holmrが関与し,季節および乾湿に関する気候地名との関連が想定される.本稿は,今後気候地名との関連をさぐるための基盤研究と位置づけ,これらの地名の語源,語形成のほか,分布状況および各分布地点における夏と冬の降水量を考察した.その結果,語源の考察から「河畔の低地草地」という地形以外に広く共通する特徴,および特定の地域にのみ顕著な特徴が明らかになった.また,イングランド南東部および北西部に多く分布し,必ずしも年間平均降水量が多い地域とは一致しないこと,一般的傾向として,中東部を除くすべての地域で,夏季よりも冬季に河川・小川が氾濫するリスクが高くなること,そして同リスクと冬の降水量における地域差は,山地および丘陵地帯に左右されることが明らかになった.
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