不稔性の種間雑種,リ
ヨクト
ウ,Phaseolus radiatus L.(品種名:明緑豆)×ツルアズキ,P.calcaratus ROXB(地方品種名:バカソ)F
1の稔性を回復させるため,それから分生した植物10個体を用いて,ラノリン法によるコルヒチン(O.1%)腋芽処理を行ない,その結果えられた11個体の植物(C
I)について,細胞学的観察を行なうとともに,その語形質を調査した。えられた結果はつぎのとおりである。1)C
I各個体の根端細胞の染色体数は2n=44で,両親およびF
1の倍数であった。また,減数分裂期の花粉母細胞で,正常な染色体対合を示す22個の2価染色体が観察された。したがって,えられた個体は複二倍体植物であることが確認された。2)C
I各個体は,形態的にほぼ均一で,きわめて旺盛に生育し,葉形や花形も大きく,粗剛な太い茎,両親およびF
1のほぼ倍数に当る孔辺細胞の葉緑体数,また,主茎の分枝数の減少など,複二倍体に特有な一般的特性を示した。3)C
Iの形質は,F
1にほぼ似た特性を示すものが多かったが,発芽の際の子葉位置,花色および1莢当り胎座数なとは,両親の中間を示し,一方,典型的な蔓性の草型,草丈や極晩生の熟期,薬表面の毛茸などの特性は♂親のツルアズキに似ていた。葉色や種子色は♀親のリ
ヨクト
ウの特性を示したが,さらに,葉の幅/長比や花序の形態については,中間を示したF
1以上に,♀親のリ
ヨクト
ウの方へ近づく傾向がみられた。4)C
Iの花粉稔性は平均70%で,個体間の変異は比較的少なく,F
1の平均2.5%にくらべて著しく回復した。結莢率は1個体が例外的にきわめて低い値を示したが,平均で24.5%に達した。種子稔性は30%程度で,若干の個体変異がみられた。また,種子は大きさに変異が目立ち,100粒重は両親よりかなり低かった。
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