食の外部化が進む中,魚離れの処方箋を考えるにあたり,外食に位置づけられ,かつ半ば強制的な給仕が可能な,社員食堂(以下,社食)や学校・病院・介護施設等の特定給食施設において,魚食提供を増やすための諸条件を本稿で明らかにした。
調査方法は,企業,大学・高専,病院,特別養護老人ホーム・介護老人保健施設(以下特養・老健)等の介護施設の合計30カ所の訪問ヒアリングを実施した。調査課題は,第一に,社食等の特定給食施設において,魚食提供の実態を明らかにすること。第2に,魚食が特定給食施設において増やせる場合の具体的な方策を提示することである。
今回の調査結果から,特定給食施設の1.特定多数の者に,2.継続的に,3.栄養管理を施す,という特徴を活用し,同施設を内製する病院や特養・老健施設において,今後,国産ひいては地元産の魚食提供を増やすことは可能との結論を得た。ただし、施設近隣に鮮魚店があること,また,その鮮魚店と介護施設との連携がうまく取り持てていること,の2つの条件を整える必要がある。
また、企業の社食においては,仮に魚食増が実現できたとしても,現状では,輸入の冷凍水産物の増加にしか寄与しない。これは,社食が費用削減の対象となっており,割高な国内産,地元産の魚食材を使用できないことによる。逆に言えば、冷凍輸入水産品の存在意義がここで確認された。
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