投資ファンドの専門業務賠償責任保険はアメリカで開発され,わが国でも徐々に普及しているが,保険の構造や機能,役割について十分理解されているとは言い難い。そこで,プライベート・エクイティ事業とアセット・マネジメント事業の構造や業務フローに沿って保険を分析評価することで,保険の輪郭を明らかにする。投資ファンド事業の性質上,投資家と事業者の間の利益相反性は避けられないものがあるが,投資ファンドの保険は,そのようなリスクを踏まえた約款構成になっており,補償や免責の内容も過去の様々な保険事故を経験しながら進化してきている。そして,今後の投資ファンド事業の発展や信認義務概念の拡大によるリスクの多様化を考えると,今まで以上に本保険の活用余地がある。このように,投資ファンド事業の実務を踏まえた投資ファンド向けの保険の意義について分析すると,本保険の発展が期待されることになる。
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