水平の剛体壁が存在しない場合の傾圧流の安定性を検討してみた。つまり, 傾圧層の上端, 下端に剛体壁を置く代わりに, 両側に無限に広がる順圧層を考え(図1), 順圧層における擾乱が exp 型の場合は外側に減衰する解を, 波型の場合は外側に輻射する解(輻射条件)を選択することにより, 安定性を計算した。但し, 地衡風近似は使わず, 計算は広い範囲の
ロスビー数
について行なったが, リチャードソン数に関しては, 0.5(弱い安定成層)と50(強い安定成層)の場合に限った。比較の為に, 傾圧層の両端に剛体壁を置いた場合の安定性も同時に計算した。
計算の結果に依ると, 境界条件の変更に依って, 得られた擾乱の成長率や位相速度の値は或る程度変わったが, 擾乱の定性的性質, 特に, その
ロスビー数
依存性の定性的傾向は大きくは変わらなかった。(図3~6参照)
ロスビー数
を増して行った時, 二つの臨界点(つまりU(Z)-cγ =f/k又は-f/kとなる高度)のうち一つは当然傾圧層に現われるが, もう一つの臨界点も現われるか否か検討してみた。その結果, 上に述べたいずれの境界条件の場合でも, steering level (U(Z)-cγ =0となる高度)が
ロスビー数
が増大しても常に傾圧層の端近くに存在し, 二つの臨界点が同時に傾圧層に現われることはないことが判った。
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