本稿は,経済の観点を取り入れた歴史学習の方法を提案することを目的とする。
経済の観点を取り入れる意義は,以下の二点である。
第一は,経済の観点で歴史を観ることで,為政者の政策だけでなく,社会構造をより深く,多面的に捉えることができる。
第二は,政策を分析,評価するための現代にもつながる見方・考え方,つまり思考の型を身に付けることができる。
以下の手順で論を進める。まず歴史学習に経済の観点を取り入れることの有効性を述べる。次に学習方法を示す。そして,時代ごとの実践例を提示する。
中村真一郎、大岡信らによれば、第二次大戦下、『建礼門院右京大夫集』は若者に愛読されたという。背景には、一九三九年、冨山房から上梓された佐佐木信綱校註本の存在、さらに、佐藤春夫、舟橋聖一らによる女性向け雑誌上での執筆活動があった。昭和一〇年代、建礼門院右京大夫は、銃後にある女性教育においてどのような役割を果たしたのか。文芸雑誌『藝苑』と、同誌に連載された舟橋「小説 右京大夫」を手がかりに考えてみる。
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