近年,小児歯科の領域でも増加している顎関節症やブラキシズムといった歯科疾患は,咀嚼や顎運動との関連が示唆されているが成因は明らかにされていない。これらの成因および咀嚼運動のメカニズムを明らかにすることを目的に歯根膜の感覚を支配する
三叉神経中脳路核
ニューロンを歯根膜側から逆行性に蛍光色素で染色する方法についての検討を行った。逆行性に染色されたニューロン細胞体を観察したところ以下の結果が得られた。
1. 2%デキストラン・テトラメチルローダミンを使用した逆行性の染色では,いずれの時間経過群においても逆行性に染色された細胞体は認められなかった。また,10%デキストラン・テトラメチルローダミンを使用した逆行性の染色では,2日経過群12匹中1匹に1個の逆行性に染色された細胞体が認められた。
2. 2%デキストラン・ローダミンBを使用した逆行性の染色では,いずれの時間経過群においても逆行性に染色された細胞体は認められなかった。
3. 10%デキストラン・ローダミンBを使用した逆行性の染色では,1日経過群では逆行性に染色された細胞体は認められなかったが,2日経過群では12匹中2匹にそれぞれ1個ずつ,計2個の細胞体が認められた。また,4日経過群では12匹中4匹に計6個の細胞体が認められた。
4. 20%デキストラン・ローダミンBを使用して逆行性の染色を行った。その結果,4日経過群12匹中2匹にそれぞれ1個ずつ計2個の細胞体が認められた。
これらの結果から,下顎臼歯歯根膜感覚を支配する
三叉神経中脳路核
ニューロン細胞体を歯根膜側から逆行性に染色することは可能であることが示された。しかし,逆行性に染色されるニューロン細胞体の数は少なく,染色される細胞の確度が低いことから方法や注入部位について検討を加えることが必要であると考えられた。
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