二つのグリッドを有する四極眞空管に於て,内部グリッド電極に二次電子放射現象のある事を最初に提案し,A. W. Hullのアノード•ダイナトロン,伊藤氏の外部グリッド•ダイナトロンと共に,四極眞空管に三種の垂下特性のある事を論じた。
次に内部グリッド電極をダイノード(Dynode)としたダイナトロン發振器の實驗をなし,各電極の電壓の影響を明かにした。再生式發振器の場合の平均相互コンダクタンスに對應して,平均負性抵抗の概念を述べ,異常振動現象をその概念に依つて説明した。
次に適當なる電壓關係に於てはアノード回路及び内部グリッド回路の双方共同時に負性抵抗を與へる事を述べ,これを利用して,アノード回路及び内部グリッド回路に別個に共振回路を入れて別個の振動を發生せしめた。この種のダイナトロンを複合ダイナトロン(Duo-dynatron)と名付けて,詳細なる實驗結果を示した。
最後に一次電子流と二次電子流を分解して考察する方法から,基本微分方程式を立てゝ,複合ダイナトロン發振器の發振周波數を理論的に論じた。Mar=0でない場合は數學的に難解の爲,計算する事が出來なかつた。
以上の複合ダイナトロンは唸り周波數發振器として適當なものと思はれる。
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