ヒト生体内に存在する主要な蛋白分解酵素阻害剤であるα
1-アンチトリプシンのヒト好塩基球からのヒスタミン遊離に及ぼす影響を検討した. α
1-アンチトリプシンは生理的血中濃度 (2.0~5.0mg/ml) でIgE刺激系 (IC
50: 2.0mg/ml) あるいはCa
2+イオノフォアA23187刺激系 (IC
50: 3.0mg/ml) によるヒト好塩基球からのヒスタミン遊離を濃度依存的に抑制した. この抑制作用はトリプシンにて解除され, また抑制効果発現の速さ, 可逆性の検討から蛋白分解酵素阻害作用に特異的と考えられる. α
1-アンチトリプシンはヒスタミン遊離機構のCa
2+に依存しない第1相のみに影響する. 健常人の血漿そのもの (α
1-アンチトリプシン2~3mg/mlを含む) はヒスタミン遊離に影響せず, 生理的には血漿中ではα
1-アンチトリプシンは蛋白分解酵素と結合することにより効果は中和されていると考えられる. しかし炎症, アレルギー等の血中のα
1-アンチトリプシン濃度の亢進時や局所の組織中では生体内でヒスタミン遊離に関与している可能性が示唆される.
抄録全体を表示