現存する江戸の地図は写図では慶長に始まり版図は寛永からである。江戸図研究の第一部として印刷図の版元名・住所とその発行図を略記し, 次回に写図及び雑図の図歴を解説したい。
江戸初期に発行された図は上部に図名を記し発行者名が記載してない。これは表具の習慣で題箋紙がなかったからだと思う。書籍組合は初期からあったと考えられるが, 寛文期から公認の組合となり, 以後これに関すろ資料も現存する。版元名・年号とも記入の江戸図の最古版は明暦三年であるが, それ以後は原則として必ず版元名が記載してあり, 版元名のない図は武鑑などの添附図と考えられる。
I番号は出版の時代順である。未見の図が出現すれば当然順が変る。
II本文中の大図・中図・小図とは紙の大小を示し縮尺ではない。
III無彩は黒だけの図, 手彩は手彩図, 色刷は色を加刷した図を示す。初期より安永ごろ迄は手彩で天明から色刷りが始まったが, 同種の図で無彩色と加彩色の図がある。なお江戸図のカッパ刷は見たことがない。
IV店早の住所不記の図は他の資料によった。
V無年号とは年号・年数・記載無き図, 無年数とは年号を記し年数不記の図を示す。
VI記載の図は私蔵本を主としてそのほか国会図書館・三井文庫・日比谷図書館本を基として記録による未見の図は出典を記した。
VII不備の点は御垂教願うと共にお問い合せの方にはでき得る限り図名・寸法・刊記など回答申し上げたい。
図の系統を分け, 江戸期の複製図, 寛永図, 寛文五枚図とその直系図, 寛文図を基にして作った図, 末期実測図を基にした図, そのほか資料による未見図に分けた。
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