溶存酸素(dissolved oxygen)とは水中に溶解している酸素をいう。空気中の酸素の溶ける量は気圧,水温,塩分などに影響されるが,汚染された水では消費される量が多いのでその割合は少なく,水が清純であるほど,その温度における飽和量に近く含有されるものである.普通清浄な水には7(30℃)~14(0℃)ppm程度溶解しているが,水温の急激な上昇,そう類の繁殖の著しい場合などには過飽和となることもある.
溶存酸素の定量はウィンクラー(Winkler)法およびその各種変法,ミラー(Miller)変法などで測定する.溶存酸素の測定は酸化,還元に基づく方法によるので,各種の溶存還元性物質や酸化性物質によって妨害されるから,試料中の妨害物質に応じ適当な測定方法を選択しなければならない.最も一般的な妨害物質は亜硝酸塩,第一鉄塩,亜硫酸,硫化物,有機物,残留塩素,浮遊物などであり,これらは下水,工場排水ともに存在する場合が多いので,溶存酸素の定量には特に下水,工場排水の別はない.しかし妨害物質の種類と量は工場排水に数多く存在するので工場排水の試料によっては近時ポーラログラフ法が試みられているが,なお一般性に乏しく,現行改訂下水試験法およびJIS工場排水試験法ともに採用されていない.
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