食道アカラシアは下部食道噴門部の運動機能障害に起因した良性疾患であり,食道癌を合併する頻度が比較的高いと言われている.教室では1996年までにアカラシア50症例を経験しており,このうち食道癌の合併は6例で12.0%の発生率であった.年齢は48~70歳,男性4例,女性2例,食道造影によるX線分類ではフラスコ型2例,S状型4例,拡張度II 度3例,III 度3例である.4例がアカラシア術後で発症後食道癌発生までの期間は13~30年であった.病型分類では進行癌2例,表在型4例であり,治療内容は外科的切除術5例,内視鏡的粘膜切除術1例である.また,本邦報告例62症例を集計し,臨床病理学的検討を行い文献的考察を加えた.食道アカラシア合併食道癌の診断にあたり食物残渣の影響,生検診断の困難性など内視鏡診断の問題点について報告し,食道アカラシアの長期にわたる経過観察の重要性について述べた.
抄録全体を表示