抄録
症例は55歳,男性.10年前に食道アカラシアと診断された.食道X線造影検査で最大42mmの直線型(St型)を呈し,食道内視鏡検査でヨード不染域を多数認め,門歯より35cm,37cmの2箇所の不染帯から生検でIntraepithelial neoplasia(High grade),Carcinoma in situと診断された.主病変は胸部下部食道の60×58mmの0-IIcで,病理組織学的に中分化型扁平上皮癌,T1bだったが,他5個の上皮内癌と多数のp53陽性異型上皮を認めた.食道アカラシアに合併した食道表在癌の本邦報告例は自験例を含めて30例で,アカラシアの病悩期間が長く,食道が6cm以上に拡張した症例が多い.表在食道癌は胸部中部食道に多く23%が多発し,腫瘍径は大きな症例が多い.自験例は長期にわたる機械的・化学的刺激がp53変異をもたらし,6個の癌病巣に進展したと推定される.