関節円板の後方転位と診断した不正咬合の1症例を経験したので, 機能検査所見ならびに画像検査所見を併せて, その概要を報告した。
患者は, 初診時年齢14歳2ケ月の男性である。間欠的な閉口困難感を訴えて当科を受診した。
口腔内診査では, 正中線は上顎に対して, 下顎が左側へ偏位していた。第一大臼歯の咬合関係は, 左側がアングルII級, 右側がアングルIII級傾向であった。
顎関節の症状としては, 閉口末期に右側の顎関節部にひっかかりを感じ, 上下顎を咬み合わせる際に抵抗感を訴えた。また, 開閉口運動時, 右側顎関節部に相反性のクリックが触知された。
機能検査所見ならびに右側顎関節の上下関節腔二重造影CT像による精査の結果, 右側の関節円板後方転位と診断した。
治療経過として, 保存療法により, 後方転位した右側関節円板の整位を試み, 関節円板の整位がなされた顎位で, 上下顎前突ならびに叢生の改善を含めた咬合の再構成を矯正治療により行った。矯正治療に際しては, 臼歯部挙上型スプリントを併用し, 上下顎両側第一小臼歯の抜歯を行い, 歯の移動を開始した。最終的に, 関節腔の拡大を図るため, 臼歯を挺出させる力系を用い, 咬合高径を挙上して治療を終了し, 良好な結果が得られた。
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