主にシカ食害による植生破壊により国内で最も絶滅寸前のチョウとなった「種の保存法」の国内希少野生動植物種・ツシマウラボシシジミの保全を目的として,a)植栽による保全活動,b)農林業との協働活動,c)地域住民との連携活動,の 3 つの課題に取り組み,サーキュラーエコノミーを基盤とした持続可能な保全システムの構築を目指した.植栽による保全活動では,主に本種が好む環境を備えた椎茸榾場でチョウの食草・吸蜜植物等の栽培・植栽を行なった.農林業との連携活動では,椎茸のブランド化を模索しながら,サーキュラーエコノミーを見据えた廃棄予定の椎茸販売を目的とする加工実験を試行した.椎茸をふるさと納税の返礼品とする協議を行い,エコツーリズムによる寄附金も募った.地域住民との連携活動では,植栽体験やリーフレット・缶バッジの配布を通して保全の普及啓発に努めた.保全シンポジウムも開催し,域外保全の拠点・足立区生物園の貢献により対馬市長から足立区長への感謝状と,足立区長から対馬市長へのチョウ標本の贈呈式が行われ,行政間レベルでの強固な保全体制も築くことができた.
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