農業経営にめん羊を組み入れた場合の定着の可能性について究明するため, 昭和53-55年度の3年間にわたり6-8戸の農家を対象にめん羊飼育部門の経営調査を行った結果, 次のように要約される。
1. 飼養規模は, 成羊換算1戸平均53-55年度の年度別頭数は10.39・13.29・14.50頭であった。
2. めん羊および建物・農機具等の耐久消費資材の年償却額は, 成羊換算年間1頭平均5,190円・4,057円・6,412円であった。
3. 飼料・敷料・医薬品等の消耗資材は, 成羊換算年間1頭平均27,634円・19,325円・20,888円で, そのうち飼料費の占る年度別比率は, 79%・77%・75%であった。給与された飼料は・主として未利用資源 (野菜くず・野草) で, 成羊換算1日1頭当り平均給与量を年度別に示すと, 粗飼料は, 9.98・8.79・9.04Kg。濃厚飼料は, 203・125・151gであった。
4. 飼養管理に要した労働時間は, 成羊換算1日1頭平均7.57・4.91・4.16分であった。作業別労働時間の年度別比率は, 飼料生産運搬に45・47・43%。給与清掃に21・19・20%。きゅう肥出しに10・11・10%の順であった。
5. 生産物の成羊換算年間1頭平均販売状況は, めん羊販売額, 年度別で2,739円・12,185円・15,314円・血液販売額15,077円・15,026円、・20,035円・羊毛販売額785円・639円・798円であった。
6. 生産費と収益性については, 成羊換算年間1頭平均で第2次生産費は, 年度別で44,774円・25,406円・32,686円に対し, 利潤は53年度-17,153円・54年度+12,401円・55年度+12,597円であったが, 8戸のうち54年度5戸, 55年度3戸が赤字であった。
この調査で実施した, 埼玉県特有の飼養管理生産方式にもとづきめん羊飼養を行う場合, 飼養規模の安定した農家は優れた成績を示し複合経営としての定着の可能性が示唆された。
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