合計特殊出生率が1.4をもしたまわっていることが表すように、近年の日本では少子化が深刻となっているが、その原因分析においては、女子労働に注目して出生力を出産・育児の機会費用と結びつける新家政学的接近が有力な位置を占めている。本稿は、その日本における有効性を検討することを目的としており、2つの観点のそれぞれから否定的な結論を導く。
第1に、バッツ=ウォード型モデルによる時系列分析を試みる。既存研究を概観して2つの式をとりあげ、いずれが表すモデルも1968-2000年の日本の合計特殊出生率に適合しないことを示す。
第2に、新家政学的接近が出生力と妻の労働力参加との負の関係を前提としていることに注目し、都道府県別データによるクロス・セクション分析を行う。出生力の指標としては1995年の「国勢調査」からえられる平均同居児数を用いる。既婚女子については有業の割合をとりあげて、さらに有業の既婚女子については正規雇用の割合をとりあげて分析を行い、出生力と妻の労働力参加との間にむしろ正の関係が観察されることを示す。
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