オーチャードグラス草地を5年間にわたって休牧して,永年草地土壌の生物相ならびに無機環境に及ぼす休牧の影響について検討した。試験区は休牧開始時に石灰を施用して休牧した区(石灰休牧区),無施用で休牧した区(無施用休牧区),従来どおり輪換放牧利用した区(対照区)の3処理区とした。本報では,深さ10cmまでの土壌中の菌数を調査し,放牧草地の土壌の微生物相および休牧に伴うその変化の特徴を明らかにしようとした。さらに,対象とした草地の前植生の二次林地の土壌についても同様の調査を実施して,各処理区の菌数の動態と比較し,以下の結果を得た。1.対照区の細菌数は,土壌水分の増減に対応して変動し,春から漸増して秋には極大に達する季節的変化を示した。両休牧区の細菌数は,休牧2年目には対照区と同様の変化がうかがわれたが,休牧5年目には土壌水分との間に一定の関係がみられず,季節的変化も認められなかった。2.各処理区における放線菌数と糸状菌数は,土壌水分との間に一定の関係がみられず,季節的変化も認められなかった。3.石灰休牧区の糸状菌数が休牧5年目に対照区より滅少したことを除いて,各処理区聞のそれぞれの菌数の間には明らかな差がなかった。4.二次林地土壌の各菌群の菌数は,土壌水分との間に一定の関係を示さず,このような関係は休牧5年目の両休牧区で認められた結果と類似した。以上の結果に基づき,草地造成,施肥,放牧等の人為の有無に関連した土壌の可逆的変化の様相について,土壌の微生物面から考察した。
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