胃癌・食道癌患者を対象に, 加齢・栄養状態・筋力と術後合併症の関係について検討し, 栄養管理の重要性について言及した.
胃癌・食道癌とも高齢者に術後合併症が多く, この原因として栄養状態・筋力および免疫能の低下が考えられた.
胃癌術後に合併症を起こしたものは, 高齢で術前体重減少が著しく, 有意に血清総蛋白・アルブミン・亜鉛値の低下がみられた. このことより多変量解析を行い, 栄養学的手術危険指数 (NRI=10.7Alb+0.004リンパ球数+0.11亜鉛値-0.04年齢) を作成し, NRI≦55を合併症の危険の高いhigh riskとした. high riskの患者は術後合併症発生率が高く, 栄養管理が必要であった. また, 術前栄養管理に反応しないものに, 術後合併症が多くみられた.
筋力は, 加齢により有意な低下がみられた. さらに栄養低下例は, 筋力の低下が著しかった. 食道癌術後合併症は70歳以上に多く, 高齢者では握力・筋肉量・PPD皮内反応の有意な低下がみられた. 特に, 肺合併症例では握力・呼吸筋力の低下が著しかった. また, 栄養改善のみられた症例では, 筋力の改善がみられた.
以上のことより, 高齢者の術後合併症予防対策の上で, 栄養状態の評価や筋力測定は重要であり, その判定に従い術前術後の栄養投与, 手術法の検討が行われるべきである.
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