能登半島中部の志賀町西海岸地域における後期更新世から完新世の地殻変動を富来川南岸断層の関連で検討した. この海岸地域には中位段丘が分布することが知られてきた. この段丘を構成する堆積物の層相を観察・記載するとともに,その分布高度を検討した.その結果,志賀町の福浦港北のさらに北にも海成堆積物が連続的に分布することが明らかになった.また,その分布高度は南の志賀町赤住から北の富来川に向かって徐々に高くなり,富来川右岸で高度を下げる.このことから,志賀町富来川に沿っておよそ10 万年,少なくとも12 万年前以降の後期更新世にも活動した活断層の存在が示唆される.さらに,能登半島中部の志賀町西海岸の海食崖に刻まれる波食ノッチとヤッコカンザシ棲管化石の分布を調査した.海食微地形や化石群集の不連続な高度分布は完新世における間欠的な隆起運動を示すが,この運動と断層活動との関連はさらなる調査が必要である.
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