老後の消費生活を支えるのは、一般的には年金給付を主な収入源とする可処分所得と貯蓄等であるが、可処分所得は収入額から公租公課を控除したものであり、公租公課は、世帯の人的構造(単身、夫婦等)、世帯の収入構造(各世帯員の収入の種類・金額)、さらには各世帯員の年齢や加入する社会保険にも影響される。この結果、世帯の可処分所得は、世帯収入額が同じでも世帯の類型によって異なり、収入の格差と相まって世帯間で相当の多様性を呈していると考えられる。
そこで本稿では、多様な高齢者世帯ごとの公租公課の現状について一定の具体的イメージを得ることを目的として、世帯員の年齢(59~75歳)等を基準に分類した38の世帯類型をモデルとして設定し、収入の種類(公的年金、給与)及び世帯収入5万円ごと(60~400万円)に、各種公租公課(所得税、個人住民税、国民健康保険料、後期高齢者医療保険料、介護保険料、被用者保険料、国民年金保険料)を一体的に世帯単位で試算し、その状況の観察を行った。
その結果、高齢者世帯における公租公課の絶対的負担水準はいずれの世帯類型でも高くはないものの、世帯構造や世帯収入額が同じでも収入構造の違いにより世帯間での相対的負担水準に相当の格差があること、同一世帯類型でも世帯収入の増に伴い負担が急増するポイント(限界負担率が100%超)があること等、今後全体的に負担水準が上昇する中でより顕著となり問題ともなりかねない現象が観察されたので、その制度的要因を探るとともに、これらの現象を抑制するための政策提言も行った。
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