2016 年 8 巻 1 号 p. 45-56
国際的な経済環境の変化,経済連携の強化などを背景として,外国から日本に来て働く外国人,外国に行き働く日本人が増加すると予想される。このような労働者及びその家族が安心して生活するうえで,適切な社会保障が受けられることが重要である。 しかし,各国の社会保障制度は,それぞれの事情を反映した国内制度として発展してきており,相互に整合性が図られているわけではない。このため,国境を越えて移動する労働者は,社会保障に関して様々な問題に直面する可能性がある。そのことは,労働者やその家族にとって問題があるだけでなく,労働者の移動を阻害する要因となる恐れもある。 本稿においては,国境を越えて移動する労働者を対象として,各国間での社会保障に関する調整が長年にわたり行われてきたEU及びドイツでの取組みを参考にして,外国と日本との間を移動する労働者の社会保障に関して生じる問題を解決するための対応策を検討する。