デュアルユース技術研究への期待は,まずは防衛装備(とくに次世代戦闘機)の調達費削減と技術獲得,そして将来的な国際共同開発を見据えたバーゲニングパワー向上を求める防衛技術外交政策の中で促された.これに日本のソフトパワー向上を求める科学技術外交政策と産学官によるイノベーション志向の科学技術政策が加わることで,デュアルユース技術研究に取り組むことが大学にも期待されるようになった.科学技術外交戦略の議論では,その管理や倫理は内閣府によって検討対象外とされ,国際化・高度化・高額化する通常兵器の取得とデュアルユース技術研究のスピンオン・オフばかりが検討課題になった.デュアルユース技術研究への積極的支援は政権によらずに推進されていたことから,それが日本の政治家のあいだである程度一般的な認識になっていたか,あるいは何らかの外的影響によっていたと考えられる.
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