本稿では,筆者らが実施した生活保護受給世帯の中学生に対する「教育・生活アンケート(2010年度)」調査により,その生活実態や学習状況を明らかにし,埼玉県で実施されている生活保護受給世帯の子どもへの教育支援員事業の支援状況を検討した。アンケート結果からは生活のリズムが不規則な者が多く,また家庭内での日常的な学習習慣が定着しておらず,成績の自己評価も低いことから,生活保護世帯の生徒において学力問題が生じている可能性が示唆された。支援の事業データの検討からは,教室参加者の高校進学率は教室不参加者や未支援者(同意書を提出していないため支援を受けていない者)よりも高く,また通信制高校へ進学した生徒の世帯への家庭訪問が多いという特徴等が明らかになった。今後の生活保護受給世帯の教育支援のあり方を考えたとき,生活保護受給世帯の子どもたちの現状からは,学習教室ばかりではなく,家庭内の教育環境への支援が必要となるだろう。
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