2023 年 44 巻 2 号 p. 89-98
本研究は、学生の主体性が低下する要因の一つとして不本意入学に着目し、「学力の問題による不本意入学者が主体性を育むプロセス」を解明することを目的に行われた。不本意入学を経て主体性が乏しい状態にあったが、その後主体性が高まった経緯を持つ20名を対象にオンラインでインタビュー調査を行い、そのうち13名のデータを対象としてM-GTAにより分析を行った。分析の結果、与えられた状況下での主体性発揮の機会に加えて他者との間で自発的な表現が受け止められると主体性の高まりが促されること、同じ境遇の人の存在等によって不本意感が薄れてくると今いる場所に自分がいる意味を見出していくこと、他者との信頼関係の構築が主体性の育ちのプロセスの各所を促進すること等が見出された。この結果から、学生相談の実践において重要なこととして、主体性の“芽生え”を逃さずに受け止めること、学生と信頼関係を築くことおよび学生が他の場所で信頼関係を築くのを支援すること、他者から影響を受けることの少ない守られた場において自分自身を見つめる機会を提供することという3つの示唆が得られた。