1957, '58の両年にわたつてニラの
分蘖
機構ならびに様式について観察した。その結果の大要はつぎのごとくである。
1.
分蘖芽の形成から分蘖
完成までの発育過程は,2に述べる葉序方向において異なる他はネギの場合とまつたく同様である。すなわち,
分蘖
が第
n葉の葉腋から生じた場合,1/
nは
n+1と
n+2の中間の発育過程にあり,2/
nは
n+2と
n+3の中間の発育度にあるのが普通である。
2.ニラの
分蘖
第2葉は親株の葉序面上,
分蘖
第1葉の親株と反対側に生ずる。したがつて形成初期は両株の葉序面は理論上合致することになる。これは最初90°の角度をもつて生ずるネギの場合と比較して興味のある相違点である。しかして,その後ネギのごとき一定の規則性はみられず
分蘖
と親株はともに不規則に葉序方向の転移を行なう。したがつて
分蘖
の配列は一直線上(最初の親株の葉序面上)からくずれてゆき,結果的にはネギの場合と同様に円形または楕円形の集団に広がつてゆく。
3. 1958年5月3日に播種した大葉ニラについての調査では,I次1号
分蘖
は7月中旬に外観的に出現し,この時期から9月下旬までは引続いて
分蘖
が行なおれ葉数も増加するが,9月末期に至つて急激に生育が衰え,10月にはほとんど発育が停止した。全生育期間に生じた1個体平均
分蘖
数23.6,発生葉数は150.5であつた。
4.露地栽培における実生苗のI次1号
分蘖
の発生節位は第6ないし7節で,その発生頻度は第6節71.4%,第7節28.6%であつた。II次以後の1号
分蘖
が発生する節は,そあ親に当たる株の第2~6節の範囲内にあつたが,その50%以上は第4節であつた。
2号以後の
分蘖
発生節を総括的にみるに,1節目,すなわち前号
分蘖
に引続いて生じた例は比較的稀で,2節目に当たる場合が最も多かつた。その平均発生率は,I次の2~8号
分蘖
の平均で77.0%,II次2~5号の平均で89.1%である。
5.以上3,4の成績は露地に栽培した生育良好な場合の調査結果であるが,
分蘖
の発生節位は高温その他環愛の変化によつて,より高位にはかなり動きやすい。しかしより低位にさげることは困難なように思われる。
6.ニラの花房分化および花茎側芽の形成機構は他のネギ類とほとんど同様であるが,花房分化期は他のネギ類と異なり,6月中旬以後の比較的高温期に当たる。したがつて花房の分化後は引続いて発育が進み,8月上中旬に開花が始まる。小花の開花順位は1花球の周縁部から始まつて中心部におよぶ。
7.花茎側芽は原則として1花茎の基部に1個のみ生ずるもので,花房分化時におけるニラの分枝型は単軸性仮軸分枝型と解される。換言すれば,花茎側芽は生殖生長期における次代の栄養生長を存続するために役立たつもので,
分蘖
的意義は薄く,株数を増加する
分蘖はすべて栄養期における最終葉以外の葉の葉腋に生ずる分蘖
芽によつてのみ行なわれるものと結論しうる。
8.異常葉および異常
分蘖
の例はネギに比してきわめて少なく,
分蘖の発育不良による分蘖
出現の遅延現象が少例観察された程度である。
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