今回の特集は「インフォプロのスキルアップ」です。
2019年1月号で「インフォプロのキャリアパス」という特集をお届けしました。この中ではキャリアパスと共に,各分野での必要な知識やスキルについても著者の方々に詳細に述べていただきました。
検索環境や技術が急激なスピードで進化・変化して行くなかで,インフォプロが的確な情報検索のサポートを行い続けるためには,知識やスキルの継続的な更新が不可欠です。日々寄せられる依頼や相談からOJTで学ぶのはもちろんのこと,スキルアップに役立つ情報が集まるよう自らアンテナをはり,知識をたくわえ,更新する作業をコツコツと続けていく必要があります。本号ではこうしたスキルアップに焦点を当て,インフォプロに必要な最新の知識の紹介だけでなく,それらを継続的に発展させていくための学び方やアイデアを得られるような特集を企画しました。
なお,本号ではある程度キャリアを積んだ中堅インフォプロのスキルアップを想定しています。
明治大学の青柳英治氏に,インフォプロ関連の各種検定・試験の内容から,求められる知識やスキルを抽出し整理していただきました。各試験によってどのようなスキルを持った人材が認定されるのかを明らかにし,そしてそこから現在のインフォプロに求められるスキルを概観し,解説していただきました。
図書館や資料室ではデータや検索環境の整備のために情報システムの知識が必要になる場面が,しばしばあります。また本文中でもご指摘いただいているように,大学で高度な理数系の科目を履修しなかったから情報システムの素養がない,とあきらめているインフォプロもいるのではないでしょうか。こうした知識やスキルを向上させるためのアイデアの一つとしての「個人プロジェクト」という方法,またそのプロジェクトのさまざまなアイデアを,東京大学の
前田朗
氏にご紹介いただきました。
一方,大学図書館等の欠かせないサービスであるレファレンスには,さまざまな問い合わせや調査依頼に応じるために知識の蓄積がとりわけ重要ですが,おさえるべき知識やスキルの幅が広いゆえに学び続けるのにもコツが必要です。本誌2017年8月号掲載の論考続編として,どのような視点をもって調査を進め知識の幅を広げていくとよいか,高梨章氏に実例をもとにご説明いただきました。この記事を読むと,特にレファレンス・ライブラリアンは探究心をいたく刺激されるのではないでしょうか。
また,文献やデータの入手には著作権法や知的財産法についての知識をもとに進めることも重要です。この分野は改正もあり,また適切な理解や解釈をもって業務にあたる必要があります。阿部・井窪・片山法律事務所の服部誠氏・高岸亘氏に,著作権法と不正競争防止法の平成30年の改正を中心に,データや著作物を扱う上での知識のアップデートができるような詳細な解説をいただきました。
最後に,企業や研究所などで特許情報を扱うインフォプロ向けに,スマートワークス(株)酒井美里氏に,サーチャーとして特許調査を主に手掛けてこられたご経験から,スキルアップについての考え方やアイデアを紹介いただきました。
実務的な内容の特集となりました。インフォプロの日々の業務の中で,ヒントや参考になれば幸いです。
(会誌編集担当委員:久松薫子(主査),稲垣理美,炭山宜也,長野裕恵)
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