日本近世の産物記録から「土産」「名物」「時献上」という言葉で表される産物に焦点をあて、地域における産物の認識や階層について、伊予大洲藩の伊予簾と鮎を中心に検討した。分析の結果、伊予簾は伊予を代表する名物であったが、各地の地名を冠した産物が増加するなかで、藩によって生産が制限され、幕閣等への献上品として機能した。また藩の時献上の鮎は、鮎目付による管理の一方、藩主の漁の対象となり、領民への鮎の下賜による、献上と拝領の関係がみられた。この時献上の選定理由として、豊かな肱川の存在や徳川家康との由緒等があげられる。また時献上と同じく、領内でも旧家の庄屋層による産物献上が実施されたが、この献上に鮎はみられず、他の産物との階層差が存在した。領内の産物には、幕府への時献上(伊予簾・鮎)を頂点として、領外へ販売する名物(和紙・焼物・蝋)、藩の台所への献上(柿・蜜柑)、それ以外の土産と階層があったといえる。
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