木を材料とする建築をつくる技術・道具・工人に関して、近世以前の諸資料を調査した結果、次の内容が明らかとなった。
(1) わが国の木を材料とする建築をつくる技術は、数千年の蓄積を経て、約400年前、基本的に完成し、その後は技術の平準化の過程であったと推定される。
(2) わが国の建築工人は、数千年前に誕生し、主要道具の使用にあたって立位と坐位を併用していたが、約200年前に、立位主体の作業姿勢に移行したと考えられる。
(3) 数千年にわたる建築工人の歴史において、工人たちを建築生産に従事させる様々な力がはたらいたが、約400年前からの近世においては、「生産効率」が大きな要素になったと推定される。
(4) 建築工人の作業姿勢が、坐位主体から立位主体へ移行した主たる要因は、⌈ いいものを、早く、安く ⌋ という経済効率優先の動きであったと考えられる。
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