本稿では、日本の歴史的文脈に即して、学力テストをめぐる国家の介入と地域の取り組みについて検討する。1960年代に行われた全国学力調査をめぐっては、職業の専門分化に対応させた職業教育をすすめようとした立場と、学習に普遍的性格を見いだして普通教育を重視した立場との対立があった。しかしながら、1960年代後半にもなると後者の立場を支えた地域や職場の学習は、農村からの人口の流出や、企業の人材育成の変化などもあって後退していく。1970年代以降、政治的な対立が不明確になっていく中で、教育は消費活動と関わりを強めていくこととなる。その後の教育政策では多様化をすすめていくものの、学校の選択にあたっては進学に特化した選択肢に関心が集中していくこととなる。こうした中で、選択肢にならない学校の役割をどのように評価するかが問われることになろう。
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