本邦では扁桃摘出術 (扁摘) の目安として, 明確なエビデンスが存在せず, 各医師により, その対応が異なるのが現状である.そこで, 扁桃摘出術の有効性について検討を行うとともに,
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的な面からも検討することにより, 扁桃摘出術のガイドライン策定の一序になればと考えた.
対象は年に4回以上扁桃炎を繰り返す63名 (小児44名, 成人19名) について質問紙を用いて, 調査を行った.扁摘例は非扁摘例に比べて, 術前後の扁桃炎, 咽頭炎の回数, 受診回数, 学校欠席日数, 欠勤日数のいずれも有意差を持って減少していた.扁摘の
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的効果をbreak-even time analysis法を用いて検討した.この方法はある事象を導入する際の支出をその導入により削減できる支出から計算して, どれくらいの期間で補うことができるかという計算法である.今回の検討では治療費と休業に伴う経済的損失を含めて算出した.小児の扁摘の総額は463,488.2円であった.手術により軽減した外来診療に伴う医療費と経済損失の合計は290,510.2円/年であった.したがってbreak-even timeは1.6年であった.同様に成人の場合の扁摘の総額は492,309.4円, 削減した外来診療に伴う支出の合計は197,613.3円/年であった.break-even timeは2.5年であった.
扁摘の治療効果は高く,
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的にも高い効果を認めた.また, 我々は扁摘の新しい基準として扁桃炎インデックス (Tonsillitis Index: TI) を報告したが, この扁桃炎インデックスは
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的にも有効性が認められた.
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