【はじめに】回復期リハビリテーション病棟(以下回復期リハ病棟)の目標の1つに在宅復帰があり,日常生活活動(以下ADL)の自立獲得は在宅復帰を左右する重要な因子である.今回,当院回復期リハ病棟における脳卒中患者(以下CVA患者)を発症から入棟までの期間で群分けし,機能的自立度評価法(以下FIM)を用いてADL状況と在宅復帰について検討したので報告する.
【対象】平成18年4月1日から平成19年3月31日の間に,当院回復期リハ病棟を退棟した患者236名中,急性増悪および検査による転棟した者を除くCVA患者66名(男性30名,女性36名)を対象とした.CVA患者の平均年齢は74.1(±11.3)歳,発症から入棟までの平均日数は57.1(±49.3)日,平均在棟日数は112.1(±58.9)日,自宅復帰率は40.9%であった.
【方法】当院回復期リハ病棟に入院しているCVA患者において発症から入棟までの期間を30日未満(以下1M群),30~60日(以下2M群),61~90日(以下3M群),91日以上(以下4M群)の4群に分け,各々の在宅復帰率を求めた.また,1M群、2M群を早期群とし,3M群,4M群を遅延群として2群に分け,2群間における入棟時FIMと退棟時FIMおよびFIM利得(入棟時FIMと退棟時FIMの差)の各々の合計,運動項目,認知項目の平均値を比較検討した.統計的分析は傾向性の検定,Mann-WhitneyのU検定を用い,有意水準は5%未満とした.
【結果】年齢,性別は4群間において有意差を認めなかった.在宅復帰率は1M群で76.2%,2M群で76.2%,3M群で28.6%,4M群で30%となり,発症から入棟までの期間が遅延することで有意に低下していた.入棟時FIM,退棟時FIMは合計,運動項目,認知項目いずれにおいても2群間に有意差を認め,早期群において有意に高い値を示した.FIM利得に関しては合計,運動項目,認知項目いずれにおいても2群間に有意差は認めなかった.
【考察】小林らは徹底した早期リハビリテーションの実施は,発症から約2ヶ月間の初期回復を促し,後期の回復へつなげることができると述べている.吉田らは,内科的に安定した状態になれば,できるだけ早期に回復期リハ病棟に移行してリハビリテーションを行なうことにより,すべての動作の機能回復が期待されうると報告している.今回の結果でも,CVA患者において入棟までの期間が在宅復帰に影響し,発症から約2ヶ月までの入棟が在宅復帰および能力の再獲得に重要であることが示唆された.原田によると,発症後早期では介入の時期と介入の頻度が理学療法の有効性に影響を及ぼすと述べており,今後の課題として早期からの徹底したリハビリテーションを実施し,回復期リハ病棟でのリハビリテーションにつなげていく必要があると思われる.
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