計10種のアミノ酸エステルの電子衝撃による骨格結合の一次切断確率をMO理論的に算出すると,質量スペクトルからの実測値と満足すべき一致を示す。その計算に用いた各官能基に関するパラメーターはケトン,アミン,エステル,アルコール,チオールなどで最適とされたものである。しかもその一致は理論の要求するように低電位衝撃の方が良好である。これらの結果は官能基に特有なパラメーターの転用可能性を示す。したがって,前報の結果と合わせ考えると,本理論が少なくとも経験的方法としてアミノ酸エステルのみならず,各種の鎖状飽和化合物の質量スペクトルの予言と解釈に有用なことを示すといえよう。
メチオニンに関するSvecの説明は衝撃電位の変化に基づき基準ピークが変わるので,必ずしも妥当でないことを実験的に明らかにし,これを本理論では説明できることを示した。
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