謡曲のさわりを集めた「小謡本」は江戸時代を通じて多くの版元から出版さ れた.同じような小謡を同じように掲載する小謡本は相互に比較でき,それに より版元の本づくりの方法や版元同士の関係性の一端が明らかにできると考え られる.本稿では,江戸後期の江戸の有名版元である鱗形屋孫兵衛と蔦屋重三 郎の小謡本を詳細に見ることで両者の編集方針や技術の違いを比較考察し,ま た,他版元の小謡本への影響関係も考察した.
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