(1) 著者は第4報の本邦に於ける珪藻土礦床一覽表の記載を更に補遺説明する目的を以て, 昨夏河島が北海道及び樺太各地の珪藻土礦に就て行つた現地調査の結果の大要を此處に報告した.
(2) 樺太に於ける珪藻土の産出状況及び珪藻土の性状が, 北海道各地に賦存する第3紀海成層の礦床とに全く相異し, 寧しろ現在北海道中唯一の第4紀湖成層のものと考へられる虻田郡喜茂別村の珪藻土の産出状況及び性状に甚だよく類似する點から想像して, 恐らく第4紀層の淡水又は半鹹水性の湖成層のものとこれを推定し種々考察を加へた.
(3) 北海道には現在約11個所に珪藻土礦床が存在するが, 前記虻田郡喜茂別村のものを除いては何れも第3紀海成層のものと推定せられ, 其の多くは頁岩及び凝灰岩層中に成層し火山灰によつて不整合に被覆せられてゐる. それらの珪藻土は厚大な積層をなすが比較的密質堅硬で一部は殆んど珪藻頁岩と稱すべき状態で賦存し, 又珪藻土中の珪藻殻は鹹水性の珪藻殻Coscinodiscusの破片及びMelosira等から構成せられる. 之に反し虻田郡喜茂別村の珠藻土礦床は第4紀湖成層のもので, 積層の厚さは極めて薄いが甚だ輕質柔軟で, 完全な珪藻殻を含む事多く主としてEpithemia, Eunotia, Eragilaria, Melosira, Navicula及びSyneara等の珪藻殻から構成せられてゐる.
(4) 本報掲載の現地寫眞は樺太のものを除き, 何れも著者の一人河島が實地調査の際に現地で撮影したものである.
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