塩酸ニフェカラントの急性心筋梗塞(AMI)に伴う心室性不整脈に対する効果と循環動態に及ぼす影響を調べた.心室性不整脈を有する発症から10日以内のAMI7例を対象とした.塩酸ニフェカラント0.3mg/kgを5分間で静注後,0.4mg/kg/hrの速度で2から4時間持続点滴静注し,前後で心電図変化,循環動態,血中薬物濃度などを比較した.本剤は,心室性期外収縮に対し7例中4例(57.1%)で有効であった. QT 時間は投与前0.40±0.06secより単回静注直後20.3%, 持続投与開始1 時問後11.0%延長した.しかしRR間隔,PR時間,QRS幅には変化がなかった.血中未変化体濃度は投与直後1,595±715ng/ml,2時間後549±91ng//mlであった.血行動態(Swan-Ganz法)には有意な変化は認めず,むしろPCWPとCIは改善傾向にあった.心原性ショックにリドカイン抵抗性の心室頻拍を伴う一例では,単回静注直後より心室頻拍は消失,持続点滴静注で抑制された.投与後血圧は上昇,RAPは低下し血行動態は改善した.塩酸ニフェカラントは心機能の低下した急性心筋梗塞症例に伴う心室性不整脈にも安全に使用できる新たな緊急治療薬として期待される.
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