直腸癌の両側肺転移 (右上葉1箇所, 左下葉1箇所) を発症し, 非末梢性病変であるために肺部分切除が困難であった症例に対し, 一期的に右S
2区域切除術と胸腔鏡併用左下葉切除術を施行し, 良好な経過を得た症例を経験したので報告する.
症例は67歳の男性で, 6年前, 直腸癌にて低位前方切除術を施行したが, 右S
2及び左S
8に腫瘤性病変が出現した.気管支鏡生検による診断は腺癌であり, 原発性か転移性かは鑑捌困難であった.他に転移所見は認められなかった.両病変とも中枢部に近く位置し部分切除は困難と思われ, 一方, 開胸による両側肺葉切除は呼吸機能の喪失が大きく過負荷であると思われた.結局, 右側は区域切除が可能なため, 開胸しS
2を区域切除し, 左側は区域切除も位置的に困難なために胸腔鏡を併用し下葉切除した.摘出標本の病理組織学的検査の結果は, 両病変とも直腸癌の転移であった.術後呼吸不全も呼吸困難感もなく, 呼吸機能の温存を企図した本術式の選択が良好な結果をもたらしたと思われた.
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