日本臨床細胞学会雑誌
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乳癌肺転移切除例の細胞像
佐藤 之俊池永 素子都竹 正文原島 三郎坂本 穆彦
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1995 年 34 巻 4 号 p. 628-633

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抄録

乳癌肺転移に対し肺切除を施行し, 切除標本の病理組織学的検索により乳癌の肺転移と診断された42例の細胞像について, 原発性肺癌の細胞像との比較を中心に検討を加えた. 肺転移巣の細胞は, 主として小型の腫瘍細胞からなる小型細胞型small cell type (SCT) と, 大型の細胞が出現する大型細胞型large cell type (LCT) の2種類に分けられた. SCTは, 小型の細胞が乳頭状あるいはボール状の緻密な重積性の強い細胞集塊を形成するもので, 直径は好中球の2倍以下で, 核は円形を呈し核縁は平滑で核クロマチンは微細顆粒状であった. これらの細胞所見は主として乳頭腺管癌, 充実腺管癌の転移で認められた. これに対しLCTは, 大型の細胞が腺管状あるいは不規則な小集塊状に出現するもので, 細胞の重積性は強いが, 結合性はやや弱い. 細胞の大きさは直径が好中球の2倍以上を示し, 核クロマチンは微細顆粒状で, 核縁に乳頭状突起 (papillary process) を認める例がある. これらの所見は主に充実腺管癌, 硬癌の転移で認められた. これに対し, 原発性肺癌の細胞は乳癌細胞に比較して細胞異型と核の多形性が全般的に高度であり, また乳頭状突起は認めなかった.
以上のような所見より, 細胞診による乳癌肺転移の診断は, 細胞の核所見や細胞集塊の構造の特徴から十分可能であり, 本疾患の診断上細胞診はきわめて有用であると考えられた.

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