ニューヨーク万国博覧会(1939年)は、参加国数58ヵ国、入場者数3254万人にも及ぶ、戦前に開かれた万博としては最大規模のものである。
日本は特設館である日本館のほかに、国際館(通称カヴァード・スペース)にも日本の展示を行った。日本館が「古き日本」を展示のテーマとしていたのに対し、カヴァード・スペース日本部のテーマは「現代の日本」だった。そしてそのテーマに基づき展示設計を担当したのが、バウハウスで学んだ建築家の山脇巌であった。
またニューヨーク万博に出品された写真壁画は、山脇の他にも原弘、山名文夫といった戦後の日本のデザイン界を牽引するデザイナーたちが構成に関わっており、それらに利用された写真は、
土門拳
、溝口宗博、杉山吉良など日本の写真史上重要な写真家たちが撮影したものだった。カヴァード・スペース日本部ではこれらの写真が積極的に活用され、これまでにない巨大なスケールで展示された。これは従来の日本の博覧会展示には見られない、画期的なものであった。
本報告では、カヴァード・スペース日本部の展示設計と写真壁画の詳細について明らかにし、これらを山脇の展示観に基づくデザイン活動として位置づけたい。
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