本研究は,中学校英語科授業における生徒の「つぶやき」の頻度と働きを検討し,生徒 3 名による授業への参加の仕方から,中学生の心的変容の一端を捉えることを目的とした。量的分析を経て,教室談話における生徒の「つぶやき」の傾向をふまえ,1 年 9 ヶ月間の授業観察データに基づき,時系列に沿った 15 事例の談話を質的に分析して,該当生徒による「つぶやき」の特徴と変容過程を検討した。結果として以下 5 点:(1)教師による発話の約 7 割が英語でもなお,生徒による「つぶやき」の約 8 割が母語に拠ること;(2)「つぶやき」の特徴として,個人的①復唱型;②知識拡充型;③直感型と,社会的④理解構築型;⑤反復再生型;⑥他者評価型が見出されること;(3)「つぶやき」の様相が変容する生徒としない生徒がおり,「つぶやき」には生徒の固有性が示されること;(4)「つぶやき」の特徴を考察することにより,学級における生徒の心的変容過程の一端が示唆されること;(5)生徒を取り巻く社会的文脈が,「つぶやき」の有り様に影響を及ぼすこと,が明らかになった。更に,学習者の授業態度や教師の認識を参照し,言語習得における認知的・社会的側面の双方を照射することにより,参加者主体型の実証的な英語教育研究が可能となり,「つぶやき」を重視する授業形態による英語学習の効用が示唆された。
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